KOGISO SHINSUKE

毎日がエブリディ

KOGISO SHINSUKE

鼠講勧誘

3.31, 2014

nezumi

 

20歳になった年の瀬、自宅に1本の電話が掛かってきた。

 

「オゥ、コギソか?今から迎えに行くわ。家の前でまっとれや」

 

唐突に言われたが、それが誰なのかわからなかった。でも声にとても迫力があって、思わず「はい」と返事した。

15分ほどすると家の前に1台の車が止まった。黒いポルシェだ。中を覗き込むとカトウ先輩だった・・。

 

カトウ先輩は中学の先輩、ていうか弟が同級生で僕らの学年のバンチョーだったわけで。

地元ではブイブイいわせてるヤンキー兄弟のお兄ちゃんなわけで。当時いろんな悪いウワサを聞いてたわけで。

お姿を拝見するのなんか、卒業以来5年ぶりくらいなわけですよ。

当然そんな極悪な先輩と繋がりなんてあるわけなく、意味わかんねと思いつつも、なんかおっかないのでポルシェの

助手席に座ったんですよ。ポルシェかっけー。無言で車を走らせるカトウ先輩。なにこれコワイ。

 

見知らぬアパートに到着すると、カトウ先輩が「あがれや」と言って部屋に招き入れました。先輩の素敵なお住まいでした。

壁に特攻服が飾ってある部屋には既に4人の先客がいて、何故か正座して一列に並んでた。

全員知ってる顔だ。中学の同級生。その顔ぶれのカテゴリーは様々だった。

 

A君(カトウ先輩の弟 ヤンキー)

B君(マジメで頭イイ)

C君(おもしろキャラ)

D君(ちょいヤンキー)

僕(いろんな意味で普通)

 

そんなに仲がイイってのもいない、なにこれ?一体何がはじまるんです?と目配せしてもA君を除いて不安そうな顔してるだけだ。

僕が皆と同じように末席に正座すると、正面にカトウ先輩が黒いビニールレザーの座椅子に座ってタバコをふかし話し始めた。

 

「今日は、おまえらに、スゲェ、いい話、してやろうと思ってさ、ケェッ・・俺な、最近商売始めてな、ケェッ・・、そんでお前らにも

儲けさしてやろうと思って呼んだわケェッ・・。その商売ってのが、まず俺がダイヤを問屋から仕入れてよ、、ケェッ・・」

 

お決まりである。二十歳になるとやたら話のある、あれである。「ネズミ講」。上手に言えば「マルチ商法」の勧誘である。

聞きながら思った。何故このメンバーに選ばれたのか?全く意味がわからん。そしてコレはどうする?コワイ先輩のお誘い

をバッサリ断れるのか俺。なんかムリっぽい。

普通じゃないしなカトウ先輩。しゃべりながらケェッケェッ言うのも何かコワイ・・。

 

「・・・てな感じで、まずはおまえらが問屋になる権利20万いるけどよ?ケェッ。ちなみにA(弟)は「やる」ってよ、ケェッ・」

A君はサクラだと思った。兄弟でより強固な勧誘体制をとってきてる。

「お前らどうするよ?やるのか?やんねぇのか?ん?ケェッ」先輩が言った。

 

B君「ぼ、僕、やりま・・す。お願いします。」1人目アウト。

 

C君「僕、お金がなくて・・」

 

と言いかけたその時、カトウ先輩がでっかい声で

「分割もできるぜぇ、月1万でどうよ、ケェッ」

と言った。C君は泣きそうな顔で

「じゃ、分割でおなしゃす」2人目アウト。いよいよヤバイどうすんのコレ。と思っていたら、

 

「俺さ、やめとくわ。」

 

D君があっさり言った。キッパリ言った。

ここぞとばかりに、すぐさま流れで

「僕もやめておきます。」早口の小さい声で僕も言った。2秒で言った。

 

カトウ先輩とA君はまさか断られるとは思ってもみなかった表情をして、しばらく変な空気になった。

でもとりあえず今日は2人勧誘できたからか、

「お前ら、損しとるのぉ、ケェッ、まぁいいや、Dの車で帰れや、コイツらは申込みしてくからよ、ケェッ」と僕らは解放された。

アパートを出るとき、振り返ると恨めしそうな顔でB君とC君が睨んでた。気持ちは理解した。

後から聞いた話では家が近所って理由でB君が僕をあの場にと提案したらしい。あれ以来B君には会ってないな。元気かな。

 

帰りの車の中で、D君が「俺、中卒で働いてるやん。金稼ぐってああいうことじゃねぇんだわ。」と言ってたのが印象的だった。

そんなD君は今土建屋の社長さんです。そういうことだと思う。

床下秘密

3.25, 2014

yukasita

 

「よし、今から持ち物検査するぞ~!机の中の物を全部出せよ~」

 

中学の時のHRで先生が言った。

定期的に行われる検査で学校に変なものを持ち込んでいないか、そして余分な教科書を学校に置いていないかを先生がチェックするのだ。

前者は特に問題ない。問題は後者だ。

学校にはその日の授業で使う教科書だけを持ってくるのがルールだった。でも教科書は重い。さらに持って帰るから忘れたりもする。

また通学時に分厚いカバンを持っている事はダサイとされていた為、学校に教科書を置きっぱなしにしてるヤツが多く存在し、

冒頭のチェックで見つかりお叱りを受け、その日は全ての教科書を持って帰らされていた。これが本当に重くてツラくてダサイ。

 

僕も重くてツラくてダサイのはイヤだったが、いつも学校に教科書は置きっぱなしだった。その日も見つかって叱られ、全部を持ち帰った。

 

やっぱり重くてツラくてダサかったので僕は考えた。どっか先生に見つからない場所はないものかと。

部室とか裏山とかは教室から距離があり運用にムリがある。出来ればこの教室内にこっそり隠しておく場所はないものかと。

 

放課後の人気のない教室、友達と2人でくまなく探してみた。

 

教室の後ろの隅っこに掃除道具を入れる木製ロッカーがあった。直接ココに教科書を隠しても先生に即見つかる。

僕らはその床に注目した。床に張られた木をコンコンと叩いてみると軽い音がする。この下には隙間があるようだ。

 

次の日、技術室から拝借してきた道具でロッカー内の床に穴を開けてみると、その下には30cmほどの空間があるようだった。

さらにノコギリで床の部分をキレイに切り取ってみると、教科書なんて余裕で入る空間が出現したのだ。

僕らは切り取った部分に蝶番をつけて開け閉めできるようにし、開けやすいように小さなツマミをフタに取り付けた。

僕と友達の教科書を全部そこに入れフタをした。ちょっと見ただけではわからないよこれ。まだまだ4~5人分の教科書は入るようだ。

 

僕らは秘密のロッカーを手に入れたのだ。

 

秘密のロッカーは先生に気づかれる事なく、僕らはウマい事やってた。でも教科書を出し入れするする際に何人かのクラスメイトに

バレ、口外しないことを条件に秘密のロッカーの使用を認めた。ロッカーの床下はなんかすごくたくさんの教科書が整然と並んでる

変な場所になった。

 

何度かの持ち物検査をクリアしたある日、先生に呼び出された。キレッキレの先生に「コレを見てみろ!」と引っ張って連れて行かれ

たのはロッカー前。勢いよく開けられたドア、そしてその床は・・・

あふれるように詰め込まれた教科書。そして肝心のフタが閉まらず、ちょっと浮いてる。一目で何かあるってわかるレベル。

 

噂がウワサを呼び、総勢10人分ぐらいの教科書が僕らの秘密のロッカーに詰め込まれてた。中学生ってばかだな。

結構問題になって、担任にはめちゃめちゃ怒られたけど、校長先生が怒らずなんとなくフワッと創意工夫を褒めてくれたのは良い思ひ出。

申告終了

3.15, 2014

kaku

 

終わった・・。確定申告オワタよ。

ここ1週間ほど平均睡眠時間2時間ほどの生活を続け、引越しダイエットからの、確定申告ダイエットを慣行しました。

実際に痩せたかと思ってたらそれほどでもなく、目の下にクマができ、日中に凄い睡魔に襲われるだけで何も良い事はありません。

そしてコンビニで売ってる「メガシャキ」ってドリンクがめちゃくちゃ効く体質だと知りました。

僕はアレ飲むと寝なくても大丈夫な体になるようです。なんかやばい。

 

昔から9月1日に8月1日の絵日記を書いてた僕。

確定申告とかも毎日、いやせめて毎月ちゃんとしてればこんなに苦労しないんですよ。

それが40を越えてなおちゃんとできないってのは、もうね、これはもう何ともならないんじゃね?とようやく気づいた2014。

1週間で細かい領収書やら、レシートやら、通帳やら、お店の日計データだとか打ち込む事4000件。

レシートとかの小さい字が見えませんよ。古い感熱紙の領収書は字が消えてるよ。カツオ(ネコ:オス3才)が頻繁に邪魔しに来たよ。

そして今日、全てのデータを入力・チェックを終えました。お疲れ様自分。

 

今年こそはちゃんと!と毎年思うのですが、たぶん出来ないので、この時期に苦労する心構えをしておこう。

もう、ちゃんとする!はあきらめた。

 

そんな確定申告作業しながら、同時にPCで昔のドラマ見てました。huluにて公開の「ケイゾク」と「spec」、そして「モテキ」。

全部観ました。というかデータ入力しながら視聴なので、ほぼ音声のみ聞きながら観ました。夜遅いのでイヤホンを付けて。

「モテキ」いいですね。いまさら感が凄いですが。

 

深夜に暗い部屋でイヤホン付けて、映像をチラ見しつつ仕事してたら思い出した。

 

中学生だった頃、どうしても11PMが見たくてね、家族が寝静まった頃に居間のテレビにイヤホン付けて、ドキドキしながら観てた事。

物音ですぐ動けるようにイヤホンは片耳だけ、手にはリモコンもって「片耳イヤホンリモコン君」で見てたなぁ。

結局親に見つかったけど、見てたなぁ。見つかってからも見てたなぁ。

 

コレを読んでる男の5人のうち3人はこの「片耳イヤホンリモコン君」を経験してるはず。

そして結婚してからも、家では片耳イヤホンリモコン君でないといろんなの見れない方、たくさんいるとかいないとか。

AVとかアニメね。たいへんだな結婚て。

 

話が脱線しましたがブログなんとなく再開します。

久方激務

3.5, 2014

katuo

 

なんだよ、アイツ!ブログやめちまったのかよ!ってお声がちらほら聞こえてくる今日この頃です。

 

お久しぶりです。コギソです。

 

いやはや、先月の23日にお店を閉めましてね、そこからホントにもう毎日大変です。

続けてきた事を止めるって、ホントに大変って事を実感してます。よく言うじゃないですか、結婚より離婚のほうが大変て。

んで再婚は変えてはみたが大差はないって言うじゃないですか。今の心境は、「飛ぶ鳥後を濁さず」の鳥になりてぇと思ってます。

 

そんな感じでnii-Bってお店に業務を集中するために引越ししたり、新しくホームページ作ったり、ペンキ塗ったり、振込したり、ペンキ塗ったり、

仕入に行ったり、口座開設したり、職安行ったり、ペンキ塗ったりしてます。

ちなみに3月8日(土)にRe:OPENしますのでお近くの方は遊びに来てください。

 

今月は確定申告もあります。もう閉店時期を誤ったとしか思えないこの惨状。寝れない夜が続きますががんばります。

そして!全てが完了したアカツキにはこちらのブログもガンガン投稿したいと思いますのでよろしくお願いします。

 

画像は仕事中に邪魔をしにきたカツオ(ネコ:オス3才)です。

無職二輪

2.14, 2014

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昔8ヶ月間無職だった事がある。8年間勤めていたコンピュータ会社を辞めたときのことだ。

最初の2ヶ月ぐらいは毎日遊んで暮らして、インドとか行ったりして楽しんでた。

 

お金はちょっとの退職金と貯金、3ヵ月後からは求職をして失業保険の給付を受けなんとかなってた。

今考えれば無計画な行動だった。結婚してたし、ヨメも専業主婦だったので無職夫婦。なのに賃貸アパートで

家賃を払うという、よくやってたわ8ヶ月。

 

そんな生活も6ヶ月を越えるとだんだんつまらなくなってくる。毎日やる事がなくなる。家にこもってテレビばっかり見てる様になり、

生活時間帯は昼夜逆転し、「なんかこのままじゃヤバイなぁ~」って思うんだけど特に行動しない破滅型の人間になりかけた。

そしていよいよお金もなくなってきた時に何故か僕は突然思いついたのだ。

 

「バイクの免許取ろう!」と。

 

まさに思いつきだ。後先の事は考えてない。でもこの有り余った時間を有効に使えるじゃないか。

もちろんヨメには反対された。バイクは危険云々よりも、何故よりによってこのタイミングなのか、

そしてお金はどうするのかって事で反対された。

僕は自分がいかに昔からバイクに憧れていたのか、ハーレーダビットソン&マルボロマンでのミッキーロークのシブさ、

そしてなによりもこの余った時間を国家資格取得に費やすという事がどれだけ重要かを懇々と説明し、

それに辟易したヨメのスキをついて自動車学校へ通い始めた。

 

時間があったおかげで免許はあっという間に取れた。

不思議な事にバイクの免許を取ると翌日からはバイクのことしか考えられなくなった。就職の事も頭から離れていった。

 

「次の仕事決めてないけどバイク買おう!」

 

また思いついた。後先の事は考えられなくなってた。

程度のいい中古を探すが良いものがなく、あれこれ悩んでる間にいろいろマヒしてなぜか新車のバイクを買う事になった。

バイク屋のおじさんに言った。

「バイクをローンで買いたいけど、今無職。ローンて組めますかね?」

おじさんは笑いながら言った。

「おぅ。ウチは無職の外国人でもローン組めたから、日本人なら大丈夫でしょ。」

 

名前と印鑑と免許で新品バイクのローンを組んでもらった。

その後僕はバイクのローンを払う為に仕事を探し再就職した。どういう形であれ働く事への大義名分って大事なんですよ。

ちなみに何故こんな話を書いてるかっていうと新しいバイクが欲しいからです。

 

*先日悩んだときに勢いで買ったプラモ完成した。やっぱフリーダムガンダムはダサいです。羽があってダサいです。

 

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一新更始

1.31, 2014

ka

 

久しぶりに大きな決断をした。

KaraKaran*という花屋・雑貨屋をしておりますが、今年の2月23日(日)で閉店する事にしました。

 

告知をしてから、いろんな人からご心配頂けたり、お問合せを頂いて大変恐縮しながらも感謝感激です。ヒデキです。

閉店の理由ですが、一言で表すのが難しいのですが、「そろそろ次に行きたいな」ってのが素直な感想です。

経営不振でもありませんし、離婚でもありません。まだガマンできます。宝くじも当たってないですよ。

 

思えばこのブログの第一回、象徴する言葉を書き込んでいました。

 

<人は全てのものを抱え込む事は不可能だ。何かを得ようとした時、何かを捨てる覚悟が必要だ>

 

そうそうこんな感じ。何かを得ようとする何かはまだ具体的ではないかもしれませんが、捨てるべきものはハッキリしている。

それは「現状」ってものだ。現状に甘んじるとつまんないですよね。んで今回思い切って閉店となりました。

いやこれね、結構勇気いりました。真剣に考えた。いつも割りと適当に物事を考えるんですが、今回は考えた。

おかげで熱出たし、寝れんかったし、んでプラモ買ったわ。フリーダムガンダム。今よく見たらダセェなぁ。

 

ある友達が言いました。

「やめる」と「終わる」は違うよ。やめるは自分で決断して決める事。終わるは周りが決める事。やめるには続きがある。

Y君、いい事いうねぇ。閉店について思い悩んでた僕の頭がちょっとスッキリした。

そう、続くんですよ、終わるわけじゃないんです。

 

3月からはnii-Bにてお花の取り扱いを始めます。アレンジメントも花束もオーダー制となりますが今まで以上のクオリティ

でご提供できるようにがんばります。そしてフラワースクールもnii-Bにて引き続き開催します。

 

っていろんなところで告知してたら、だんだん楽しくなってきてですね、もう今はワクワクさんです。

新たな気持ちで、初心を忘れずに頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願い致します。

 

今回はマジメに書きましたよ、ツツミさん。

諸行無常

1.21, 2014

m16

 

松田君(仮)のうちは貧乏だった。

中学生のときに友達だった松田君。いつも同じお下がりのジャージを着てて、古い団地に住んでた松田君。

彼は明るくておもしろくて運動神経が良くて人気モノだった。家がほどほどに近所だったのでたまに一緒に遊んでた。

松田君ちに遊びに行くと決まって出されたのはレモン水だった。水道水にレモンを入れたそれは爽やかで美味かった。

台所でレモンを輪切りにする松田君が妙に大人っぽく見えた。

 

そのころ僕らの間ではサバイバルゲームが流行ってた。モデルガンを手に山で行う遊びだ。

2チームに分かれて敵チームを狙い打つ。そんな遊び。

 

松田君はモデルガンを持ってなかった。でもどこからから借りてきたり、金持ちの子が一緒に遊んでるときには

余ったモデルガンを借りて参加していた。どこからも借りれない時は武器なしで参加。

僕らは松田君が体に触れたら撃たれた事と同じって特別ルール「松田タッチ」を採用した。

素早い松田君の「松田タッチ」は近距離戦で威力を発揮。敵チームに恐れられた。

 

僕もサバイバルゲームに夢中になり、翌年のお正月には貰ったお年玉をつぎ込んで新しいモデルガンを1丁買った。

当時¥12000もした憧れのM16アサルトライフル。僕の宝物になった。

 

その日、僕は家の用事でサバイバルゲームの誘いを断った。そしたら家に松田君から電話があった。

「M16貸してくれへん?」っていう。

僕はまだあんまり実戦で使っていない宝物を人に貸すことを躊躇した。

「M16はちょっと・・前使ってたやつならイイよ。」

「お願いやて!貸して。一生のお願い!頼むわ!絶対壊さへんから!」

と食い下がって来た。

松田君からこんなに頼まれる事も今までなかった事だし、一生のお願いとかいうので僕は貸すことにした。

 

「ありがと!!夕方に返しにくるから、ほんとありがとう!」

うれしさテンションMAXでお礼を言われ、僕は躊躇した事を後悔した。初めからこころよく貸せば良かった。

まだまだ小さいな俺って思ったリアル中2だ。

 

僕が用事を済ませ家に帰ると雨が降り始めた。もう辺りは暗くなり始めているのに松田君はまだ来ない。

部屋で漫画を読んでると、部屋のガラス窓を外からコンコンッて叩く音がする。

窓を開けるとそこにはびしょ濡れになった松田君。そして何故か号泣していた。

 

「ぐぅっえっぐぐっえ、ごぉぇええっんねぇえっ・・・えっエッェッ・・」

 

ビックリした。中2とはいえ男の号泣。昼間のテンションとえらい違う。

松田君はものすっご小さい声で言った。

「M16壊した・・」

「え?」

「M・・16・壊した・・」

 

2回言ったので間違いない。やりやがったよ松田君。

松田君は後ろ手に持っていたM16をそっと差し出した。

ぱっと見たとこ大丈夫に見える。キズとかついたんかなと思って凝視してると松田君がもひとつ差し出した。

銃身だった。銃の先っぽだわ。よくよく見るとポッキリ折れてるわ。大事なとこポッキリですわ。

 

僕は呆然とM16と折れた銃身を手に立ちつくしてた。松田君はまだ号泣中だ。

僕は考えた。これはどうする?弁償してもらうのか松田君に?家が貧乏で号泣してる松田君に?

空手やる前の長渕みたいな恐いお父さんを持つ松田君に?

 

ムリだった。家庭環境を想像し気を使う事ができるお年頃、とても弁償しろとは言えなかった。

めったにみせないホトケの心をむき出しにして僕は言った。

 

「いいよ・・。形あるものはいつか壊れるから」

 

中二病全開で言い切り、僕は松田君を許したけど「一生のお願い」を多用する人を信じなくなった。

仕事の芸

1.16, 2014

gay

 

高校の時にバイトをしていた。フランス料理屋さんのギャルソン(ウェイター)だ。

といっても山の中にある一軒家フランス料理屋さんでマスターと僕の2人でお店を回すこじんまりとしたお店。

 

僕は当時名ばかりの陸上部に所属してて、週4回午後5時にはバイト先に向かい、午前1時ぐらいまで働いてた。

お店は最寄の駅から自転車で30分。そこから自宅まで45分ぐらいかかったので、

深夜に山道でパトカーに見つかって逃げ回ったのはいい思い出。

 

そのころは美味しいものなんてイチジクしか考えられなかったので、そのお店が美味しかったかどうかわからない。

でも名古屋からわざわざちょっとした有名人が若い女とお忍びで来てたので美味しかったんだと思う。

ちなみに20年以上たった今はその店はない。

 

このバイトは本当にいろんな事を教えてもらった。仕事や掃除、接客の基本や人付き合いまで、

17歳のうちに経験しておくとイイぞオイって事を学ばせてもらった。今でもマスターには感謝しています。

ただしマスターはホモでしたが。

 

休憩室にあてがわれてた部屋にはきわどいホモ雑誌やマンガが散乱し、今ならわかるいろんな小物も部屋の隅に点在してた。

たぶんマスターは若い男が好みで僕を含めてバイトは若い男しかいなかった。僕の後任も男子高生だった。

だからこう、雰囲気や言動で、「あぁこの人はホモなんだ。」って漠然と思ってた。

そんな中、毎回深夜に及ぶ仕事。洗い物、掃除など雑用を済ませ、さぁ帰ろう!ってなるとほぼ毎回マスターが

 

「コギソくぅーん、泊まっていきなよ」とかいう。今思えば誘われてたわ。

 

当時あんまりソッチの知識や興味がなかった僕ですが、本能といいますか、危機管理能力といいますか、

なぜか「家に帰る」事をかたくなに守ってた。結果それは貞操を守る事になった。

もしも泊まってたら僕の人生もちょっと変わってたかなと思う。

 

この経験のおかげで大人になってから性癖について偏見を持ったことがありません。

どんな変態にあっても大丈夫。いろんな人がいるからね。

何事も若いうちに経験しとけば免疫がつくかなと思う。

暴言と嘘

1.6, 2014

uso

 

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

昨年のクリスマス前より更新が止まりまして申し訳ないです。

仕事がクリスマス前から激務となりまして、31日までビッチリと仕事してました。ブログこんなんですが、実は働いてます。

数々の忘年会をキャンセル。その中にはこのSignaL主催の忘年会も含まれてました。参加できず残念です。

 

で、年末頑張ったので今は冬休み中です。全自動でゴハンが提供される実家にて、頭が痛くなるほどの睡眠を摂取し、

1ミリも外に出ない正月を楽しんでいます。

 

冬の休みの日は家でプラモ作ったり、ゲームをしたりしてるわけです。

もうやってる事が中学生の頃とそんなに変わらないんじゃないかって思うんですよ。

ゲームは昔から大好きでいろんなゲームをやりますが、最近はあんまり時間もないのでRPGとかは無理。

なので主に格闘ゲーム、中でも「鉄拳」てやつをやってます。

最近のゲームはネット接続で対戦相手が自動的に決まり、国内はもちろん、海外の人とも対戦が可能です。

これが、コンピュータ相手に対戦するよりも断然面白い。

次々と組まれる見知らぬ対戦相手。戦っては勝ったり負けたりするんですが、そこに対戦以外のコミュニケーションは存在しません。

名前もID表記なのでわかりません。ネット対戦ってとてもドライな関係の遊びなんですよね。通常は。

 

ただ対戦した相手とはゲーム機を通じてメッセージを送る事が出来るんです。

対戦ゲームなのでもちろん勝負です。僕も自らのテクニックを駆使して全力で挑むんですね。

時には相手をボッコボコに叩きのめす事もあるわけです。すると対戦終わってから稀に負けた人からメッセージが届くんです。

その内容が、

 

「しね」

「やめろばかしね」

「きもいわしね」

「しねしねしねしね」

 

っていう、殺伐としたメッセージが届くんですよ。あのですね、僕今年で42になります。

こんな内容のメッセージで受け取ってて良いのだろうか?ってちょっと考えるわけなんです。

これ送ってくるのがもしかしたら小中学生かもしれない。おじさん泣いちゃうよ?

 

ネットの匿名性を生かしての誰かからのメッセージ。8割方は「しね」が入ってます。正直ちょっとヘコみます。

おかげで僕のメッセージボックスは罵詈雑言でいっぱい。メッセージ機能いらないなっていつも思うんですよ。

 

それで、先日実家に帰った時に、何気なく兄の部屋に行ったところ、兄もネットゲームをしてましてね。

血は争えないなと思って兄がゲームしてるのを後ろからみてたんです。

画面には可愛らしい女の子が武器を持って冒険してます。これはネットで繋がったプレイヤーがチームで敵を倒すゲームのようです。

このゲームは他の人とのコミュニケーションが大事。チャットと呼ばれるメッセージ機能で他のプレイヤーと会話しながらゲームを進めます。

兄は手馴れた操作でメッセージを打ち込んでいくのですが、その文章がね、明らかにね、こう、若い女の子の書く文なんですよ。

「何この文章・・最後に音符マークって何だよ。兄貴、キモイな・・」って言うと兄が、

 

「俺、ネットでは女子高生って事になってっから。こうすると見知らぬ人がアイテムくれるんや。」とかいう。

 

「なってっから」じゃねぇよ。ネカマですよ、ネカマ(ネットオカマ)。身内がネットの匿名性をガッツリ利用してるとは思わなかった。

ネットの世界は広大で、ウソとギマンに溢れてる。

闇鍋の具

12.20, 2013

boy

 

小学生~高校生の初めまでボーイスカウトに入ってた。

 

夏になるとキャンプに行った。僕が中学生の時だ。このキャンプはお遊びっていうよりもスパルタンな内容で、

「今日の夕食を近所の農家さんから分けて頂きました!ありがとう!ヤサカ!」

って団長がもらってきたのは生きてるニワトリだったりした。

2班に1羽ずつ支給されたニワトリを僕らはシメ、血抜きし、茹でて、羽根をむしった。

最後は農家のおじさんが捌いてくれて、それを焼いて晩御飯にする。そんな感じのキャンプ。

 

あるキャンプの夕方、団長が全員を集め言った。

「今日の夕食は闇鍋だ。ミソを支給するので各班で食材を集め鍋を作れよ。あ、キノコはやめとけ毒あるから。」と。

 

僕らは班ごとにミソと鍋を用意して、火をおこし、ミソの汁を用意した。食材は各自で集めて来るってことで火の見張り

以外は山に散って食材を探し始めた。

うまくいけば魚や野草、山菜なんかが採れそうなものだけど、団長の告知が夕方だった為、既にあたりが暗くなり始めてて

なかなか食材となるものが見つからない。見つからないと今日の夕食は具ナシ味噌汁となる。

班員からも役立たずと言われそうだ。それは避けたい。

 

僕は山を少し降りた場所にある小川まで来て、手製の網で魚を採ろうとしてた。小さなハヨやフナならなんとかすくえないか

と思ったからだ。川に入りアミをふるうものの、網の目が大きすぎて、小さな魚は採れなかった。

しばらく奮闘したところ、唯一捕獲できた生き物がいた。「アマガエル」である。

 

はたしてアマガエルは食材としてアリなのか?以前ウシガエル(食用カエル)は食べた事があって、

鶏肉に良く似てた記憶がある。あれよりかなり小さいけど食べるとこあんのかなって思った。

さらに時間が経っても結局、2匹のアマガエルしか捕まえる事ができなかった。辺りは暗くなりこれ以上はムリだわ。

 

しょうがないので戻って、僕はアマガエルを班の鍋にすばやく投入しフタをした。他の班員も次々と何かを投入してた。

他の班員から「何入れた?」とか「魚?ね、魚?」って言われたけど、「グフッ内緒」の一言で片付けた。

「ナマモノもあるだろうからよく火を通せよ。」とリーダーからの通達があり、僕らは小一時間ほどそれを煮込んだ。

鍋からは何ともいえない変な匂いがしたが、ミソの大量追加投入で気にならなくなった。

 

「皿に盛ったものは必ず食べる」それが闇鍋のルールだ。ゴハンも炊き上がり暗闇の中で食事が始まった。

取り分けられた味噌汁を手に「頂きます!」と一口食べた。なにこれ意外に美味い。

誰かが採ってきた「野菜的な何か」や「ジャガイモ的な何か」、そして「なんだかわからない何か」が渾然一体となって押し寄せてくる。

これは「何か」の宝石箱や。

班員も美味しい美味しいと口々に評し、意外にも僕らの鍋は大成功だったと思う。アマガエル入ってるけど。

 

班長が、何かを食べながら「ナニコレ?やたらと骨ばっかりのヤツがあるけど、ナニコレ?誰が入れた?」と言ったが

それが一体何であるかはわからない様だった。なんとなく「テヘヘ、それアマガエル!」とは言わなかった。

空気を読むって大事です。