KOGISO SHINSUKE

毎日がエブリディ

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海辺の宿

11.12, 2013

noto

 

僕の趣味の一つがバイクです。ちょこちょことツーリングに行くのです。

今年の夏は1人で能登半島1周ツーリングに行ってきました。

1泊2日の遠出ツーリング。1人でもなかなか楽しかった。能登半島は海あり山ありでツーリングに最適でした。

 

その時に泊まった民宿のホームページには温厚そうな老夫婦が笑顔で寄り添ってます。

料理の写真は海の幸満載で美味しそうなお刺身がドンッと掲載され、

「毎朝市場で新鮮な食材を仕入れてます!」太字で書かれた売り文句に、おじさんの笑顔。間違いねぇなと思い予約しました。

そんな民宿での出来事です。

 

 

ツーリング初日を終えて宿に到着。

「こんにちは~!」と民宿に入ると白ランニングに白ステテコのおじさんがギロリとこっちを見た。ホームページのおじさんだ。

 

「予約した人?」

「はい、お世話んなります、電話したコギソです」

「書いて」

「え?」

「宿帳」

「あ、はい」

 

僕は入って10秒足らずで宿帳に記入し始めた。

ここまで「いらっしゃい」含む挨拶はなし。なかなかのクイック&スパルタンな感じ。

 

書いてる間におじさんは引き出しからゴソゴソと部屋のカギを探して僕に差し出した。

カギは小さい鈴がついてて、僕が手にするとチリリンとかわいい音で鳴る。自転車のカギについてるアレ。

「部屋は201号室。あとお風呂用意できてるから」

おじさんに笑顔はない。

 

建物は古いけど小奇麗で、ところどころにおじさんたちの生活感が漂ってる感じの民宿。普通だ。

部屋に入って荷物を整理してるとドアをノックされ、おじさんが顔をのぞかせて言った「お風呂用意できてるから」。

まだ5時だったので、「あとで入ります」と答えるとだまってドアを閉められた。

なんかコワイ。ホームページのイメージと随分違うな。そっけない対応がウリとみた。

 

ようやく部屋で一息ついた。食事は6時30分からなので、食事まで少し寝よう・・

横になってウトウトし始めたら、ジリジリジリジリジリッーーーー!と火災報知機みたいなベルの音で飛び起きた。

火事!?と思ったら、館内放送で【お食事の用意ができましたのでどうぞ】とかいう。びっくりするわ。

にしてもまだ5時15分だ。早くないかい?まぁいいやと部屋を出たが201号室の鍵は壊れてた。

 

食事をする部屋にはすでに料理が並べられてた。

客は僕一人だけだ。どうやら館内放送は僕だけの為に放送してくれたようだ。ありがてぇ。

ビールを頼んで、料理を食べた。が、どの料理も冷めてた。てか本当にマズかった。ゴハンですら冷めててカタい。

でも海まで歩いてすぐの立地。お刺身は美味いんでしょ。毎朝仕入れてるからね。

カルパッチョ・コギソの異名を持つサシミストの僕はお刺身に期待した。

あっさり裏切られた。なにこれマズイ。赤身3切れのみ。メインが豚の生姜焼きって、毎朝何を仕入れてるんだろう。豚か?豚なのか?

 

父親から「ヨソで出されたものは全て食べろ」と教えられた僕は頑張ってそれらを完食した。僕が黙々と料理と向き合ってる間、

隣の部屋でおじさんとおばさんはずっと小声でケンカしてた。外にある鉢に水をやって来い、あんたが行け、の応酬だ。

僕がやってこようかと声かけようと思ったがやめといた。温厚そうな夫婦でもケンカぐらいするさ。

食べ終わるころにおじさんが来て、「お風呂用意できてるよ」とまた言った。

 

「風呂に入れ」って言われる実家気分を味わいながら、返事を曖昧にして、僕は夜の海辺の町へ散歩に出た。

月明かりが綺麗で海風が涼しい。気持っちええわ~「旅」って感じがするわ。

すぐ近くに地元の居酒屋さんがあったので入ってみた。日本酒を頼み、刺身を食べてみた。なにこれウマイ。涙が出るほど美味かった。

僕は民宿での夕食を後悔し、父親を恨んだ。

 

ほろ酔い気分で宿に戻るとおじさんが「お風呂用意できてるから」とまた言った。これ挨拶なのかな。

僕はゆっくり頷いて風呂に入る事にした。

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